◇◇◇ ポストゲノム情報への招待 ◇◇◇

京都大学化学研究所バイオインフォマティクスセンター

金久 實

 ヒトからバクテリアまで数多くの生物種において全ゲノム配列が決定され、21世紀の生命科学ではゲノムの情報を基盤に、細胞、個体、生態系といった異なるレベルでの生命現象の理解が進み、同時にゲノムから有用性を見いだし産業化を行う応用研究が活発化すると考えられる。本書「ポストゲノム情報への招待」は1996年に出版した「ゲノム情報への招待」の改訂版であり、このようなポストゲノム時代の中心的な学問分野となりつつあるバイオインフォマティクス(生命情報学)への入門書である。配列と立体構造を中心とした従来のデータベースやデータ解析法に加え、本書では新たに細胞におけるタンパク質間相互作用ネットワークやグラフアルゴリズムといった新しい概念と方法論を紹介している。またゲノムネットの中心システムとして提供されているKEGGに関する唯一の日本語参考書でもある。

【目次】

1章 遺伝情報の伝達と発現
    ゲノムと遺伝子
    細胞
    DNAとタンパク質
    セントラルドグマ
    RNAの世界
    分子生物学の技術革新
    生物ゲノムの情報量
    メンデルの遺伝法則
    リンケージ解析
    シークエンシング
    ゲノムの機能解析
    生命の設計図
    秩序とゆらぎ

2章 核酸・タンパク質の物理化学

    主鎖と側鎖
    一次構造
    二面角
    二次構造
    ヘリックスの多型
    立体構造
    コンピュータ・グラフィックス
    熱力学的原理
    構造転移
    反応キネティックス

3章 分子生物学データベース

    データベースの進化
    関係データベース
    演繹データベース
    オブジェクト指向データベース
    文献データベース
    アミノ酸配列データベース
    立体構造データベース
    塩基配列データベース
    フラットファイル形式
    ゲノムデータベース
    モチーフライブラリー
    化合物と化学反応のデータベース
    アミノ酸指標データベース
    系統分類データベース
    コンピュータ・ネットワーク
    リンク情報によるデータベースの統合
4章 類似性検索と構造・機能予測
    配列解析の諸問題
    ダイナミック・プログラミング
    グローバルアライメント
    ローカルアライメント
    ホモロジー検索
    FASTAアルゴリズム
    BLASTアルゴリズム
    マルチプルアライメント
    系統樹解析
    シミュレーテッド・アニーリング
    RNAの二次構造予測
    ホップフィールド型ニューラルネット
    遺伝的アルゴリズム
    タンパク質の二次構造予測
    階層型ニューラルネット
    コード領域予測
    膜貫通部位予測
    機能部位予測
    隠れマルコフモデル
    形式文法
    3D−1Dアライメント
    エキスパートシステム

5章 ゲノム情報から生命システム情報へ

    還元論と合成論
    抽象化レベル
    生命システム
    ネットワーク予測
    グラフ
    KEGGオントロジー
    タンパク質間相互作用
    グラフ比較
    同型グラフ
    相関クラスター
    パス計算
    グラフの特徴抽出
    2項関係と演繹
    ポストゲノムへの視点

A5版、180ページ、定価 本体2300円+税
共立出版
2001年6月3日発売