ヒト21番染色体アルフォイドDNA領域の分子構成及びその機能解析
名古屋大学理学部
舛本 寛
目標
セントロメアは染色体の次世代細胞への分配と維持に重要な働きをする染色体上の領域です。この研究ではヒト21番染色体に焦点を絞り,
- セントロメア領域の分子機構を詳細に解析すること
- セントロメア機能に必須な DNA 配列を限定すること
などを目標として研究を進めています。
成果
ヒト21番染色体セントロメア領域にはアルフォイド DNA(基本繰り返し単位は170 bp)と呼ばれる巨大繰り返し DNA 領域が2ヶ所(a 21 - I とa 21 - II)存在することを明らかにしました。
- α21 - I : 約1.3 Mbp の領域であり,基本単位が11回繰り返し高次反復単位を形成し,さらにこの高次単位が約700回繰り返す規則正しい階層的反復構造を形成している。
- α21 - II : 1.9 Mbp 以上の領域で,基本繰り返し単位の相同性は変化に富み,a 21 - I のような階層構造は形成していない。
現在この2つの繰り返し領域を巨大 DNA 断片として酵母の人工染色体(YAC)へクロー
ニングすることを進めています。今後は21番染色体セントロメアを覆うクローンを得ることと,各クローンを動物細胞へ導入し機能検定を行う方針で研究を進めていきます。
図の解説
ヒト21番染色体セントロメア領域に分布する a 21 - I と a 21 - II の2つのアルフォイド巨大領域。抗セントロメア抗体抗原蛋白質 CENP-B の結合部位を CENP-B box と標示してある。
参考文献
舛本 寛,池野正史,北川克巳 : ヒト染色体セントロメア (1993) 蛋白質核酸酵素 38 : 403-411